「攻めろって言ってるのに、全然いかないんです」
攻めるというのは、突っ込むことではなく、先に手を出して相手に触ることだ、という話です。
「先に手を出せ、は分かりました。でも、うちの子はそれができないんです。どうしたらいいですか」
もっともな質問だと思います。分かっていても、体が動かない。だから子どもは困っているんです。
今日は、その続きを書きます。攻められる子は、性格で決まるのではなく、練習で作れる。そのやり方です。
攻める子は、性格ではありません
まず、ここを先に言っておきます。
「うちの子はおとなしいから、攻めるのは向いていない」
そう思っている親御さんは多いです。でも20年見てきて、最初から攻められる子は、そんなに多くありません。
攻められる子の多くは、攻めても大丈夫だった経験を、たくさん積んできた子です。
先に手を出したら、うまくいった。うまくいかなくても、怒られなかった。もう一回やってみた。この繰り返しで、体が先に動くようになります。
つまり、攻める力は「性格」ではなく「慣れ」です。慣れなら、練習で増やせます。
練習の工夫1:先に触ったら勝ち
一番効くのは、勝ち負けの基準を変えてしまうことです。
普通の組み合いでは、倒したほうが勝ちです。でもこれだと、攻めた子が返されて負ける、ということが起きます。
そこで、ルールを一つだけ変えます。「先に相手の膝に触ったほうが勝ち」。
- 倒さなくていい
- 技をかけなくていい
- とにかく先に触ったら1点
これだと、待っている子は絶対に勝てません。先に動いた子だけが点を取れるので、体が自然と前に出るようになります。
遊びのように見えますが、試合で一番大事な「最初の一歩」だけを、何十回も練習できます。
練習の工夫2:時間を短く切る
2つめは、時間です。
2分の組み合いだと、子どもは様子を見ます。時間があると思うと、待ってしまうんです。
だから、10秒勝負にします。
10秒しかなければ、様子を見ている暇がありません。「よーい、始め」で、すぐ動かないと終わってしまう。
これを何本も続けると、開始の合図と同時に動く癖がつきます。試合の最初の笛で動けない子には、特によく効きます。
練習の工夫3:攻めても失点しない練習を作る
3つめは、失敗の値段を下げることです。
攻められない子が怖がっているのは、攻めて返されて、点を取られることです。
だから最初は、相手を「守るだけ役」にします。

- 相手は守るだけで、攻め返さない
- 攻める側は、何回失敗してもいい
- 返されても、点にならない
こうすると、攻める側は失敗を気にせずに何度でも入れます。入る感覚を先に覚えてから、だんだん相手にも攻め返させる。順番を逆にしないことが大事です。
いきなり本気の相手と組ませて「攻めろ」と言っても、怖い経験が増えるだけです。
練習の工夫4:数えるのは勝ち数ではなく、攻めた回数
4つめは、褒め方です。
練習のあとに「何勝した?」と聞くと、子どもは勝てる形だけを選ぶようになります。
代わりに、こう聞きます。
「今日、何回自分から行った?」
勝ち負けではなく、攻めた回数を数える。これだけで、子どもの目標が変わります。
負けた試合でも「5回自分から行けた」なら、それは前に進んだ日です。その日は、ちゃんと褒めてあげてください。
コーチとして気をつけていること
練習の工夫より、実はこちらのほうが大事かもしれません。
攻めて失敗した子を、絶対に叱らないこと。
頭が下がっていた、距離が遠かった。直すところはあります。でも、それを伝えるのは「よく行ったな」と言ったあとです。
順番が逆になると、子どもは「攻めると怒られる」と覚えます。一度そう覚えると、元に戻すのに何か月もかかります。
叱るなら、何もしないで時間が過ぎたときだけです。それも、叱るというより「次は1回だけ行こう」と伝える程度で十分です。
家でできる、攻める遊び
最後に、家でできることを書きます。どれも道具はいりません。
- しっぽ取り:タオルを腰にはさんで、取り合う。先に動かないと取れない
- 押し相撲:向かい合って手のひらで押し合う。待っていると押し出される
- 先にタッチ:親と向かい合って、相手の膝に先に触ったら勝ち

大事なのは、親がわざと負けすぎないことです。全部勝たせると、子どもは攻める必要がなくなります。ときどき親が先に動いて、子どもに「先に行かないと負ける」と感じさせてください。
そして子どもが先に動いたら、勝ち負けに関係なく「今の早かったね」と言ってあげてください。それが、試合の最初の一歩につながります。
まとめ
- 攻める力は、性格ではなく慣れ。慣れなら練習で増やせる
- 先に触ったら勝ちにすると、待っている子は勝てなくなる
- 10秒勝負で、開始と同時に動く癖をつける
- 攻めても失点しない練習で、入る感覚を先に覚えさせる
- 数えるのは勝ち数ではなく、攻めた回数
- 攻めて失敗した子は、叱らない
前回の記事で、家で言うなら「1回でいいから、先に手を出しな」と書きました。
その「1回」を、練習と遊びの中でたくさん積ませてあげてください。積んだ回数のぶんだけ、試合で体が先に動くようになります。



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