これは、ある家族の話です
「習い事、何にする?」
息子が5歳になったとき、夫婦でそんな話をした。近所の子はサッカーか野球をやっている子が多くて、なんとなくそのどちらかかなと思っていた。
でも今、息子はレスリングのマットの上にいる。
なぜそうなったのか。同じように習い事を迷っている親御さんに、うちの話を少し聞いてほしい。
きっかけは、正直「消去法」だった
体を動かす習い事をさせたい、というのは夫婦の共通意見だった。ただ、いざ選ぼうとすると迷いが出てきた。
サッカーは地域のチームを見学に行ったら、子どもが30人以上いた。賑やかでいい雰囲気だったけど、うちの息子はどこにいるんだろう、ちゃんと見てもらえるんだろう、と少し不安になった。
野球は道具代が思ったよりかかること、週末の試合や練習の拘束が多いと聞いて、共働きのうちには少しハードルが高かった。
そんなとき、夫が「レスリングってどうかな」とぽつりと言った。
正直、最初は「え?」と思った。レスリングって、オリンピックで見るあれ?うちの子には激しすぎない?怪我しない?というイメージが先行して、あまり乗り気じゃなかった。
でも、「まあ見学だけでも」と気軽な気持ちで道場の扉を開けた。
見学に行って、全部ひっくり返った
道場に入った瞬間、思っていたのと全然違った。
子どもたちが笑いながらマットの上を転げまわっていた。コーチが一人ひとりに声をかけていて、怒鳴り声なんてどこにもない。保護者も和気あいあいとした雰囲気で、なんだかアットホームな空気が漂っていた。
息子は最初、入口でもじもじしていた。でも練習を15分も見ていたら、「やってみたい」と言いだした。
その一言で、決めた。
やってみてわかった、レスリングならではの良さ
通いはじめて気づいたことがある。
レスリングは1対1の競技だ。チームスポーツと違って、試合で負けても誰かのせいにできない。うまくいかなければ、自分の課題として向き合うしかない。これが親の目から見て、すごくいいと感じた。
「今日負けたのは○○くんが強かったから」じゃなくて、「次はこうしてみよう」と自然に考えるようになっていった。
それから、体格に頼れない点も面白い。同じ体重のクラスで試合をするので、大きい子が必ずしも勝つわけじゃない。技術と気持ちで勝負できる競技だと知った。
礼儀の面でも変化があった。道場では挨拶が徹底されていて、練習前後には必ず礼をする。気づいたら家でも「いただきます」をちゃんと言うようになっていた。親が言わなくても。
最初は泣いて帰ってきた
いいことばかり書いたけど、最初はしんどかった。
練習が終わって迎えに行くと、目が赤くなっている日があった。転ばされてくやしかったんだと思う。「もうやめたい」と言ったことも、正直一度や二度じゃなかった。
そのたびに「じゃあやめようか」とは言わなかった。「来週だけ行ってみよう」を繰り返した。
3ヶ月くらい経ったころ、道場から出てきた息子の顔が変わっていた。なんというか、目に力が出てきた。
初めて試合で勝った日のこと
地区の大会で、初めて一勝した。
相手の子にタックルをして、ポイントを重ねて、最後必死に守り笛が鳴ったとき、息子はガッツポーズをした。観客席から見ていた私は、こっそり泣いた。
勝ったことよりも、あの「やめたい」と泣いていた子が、マットの上に立っているのが誇らしかった。
メジャーじゃなくていい
サッカーや野球を否定したいわけじゃない。それが合う子には最高の選択だと思う。
ただ、うちの息子にはレスリングが合っていた。それだけの話だ。
習い事は、周りに合わせて選ぶ必要はない。見学に行って、子どもの目が輝いた場所が、たぶんその子の居場所だ。
あのとき、夫の「レスリングってどうかな」という一言を拾ってよかったと、今でも思っている。
この記事が、習い事を迷っているどなたかの参考になれば嬉しいです。


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